一行書評

様々な本のエッセンスを、ずばり一行でまとめています。

夕凪の街 桜の国

一行書評
【「これから貴方が豊かな人生を重ねるにつれ、この物語は激しい結末を与えられるのだと思います。」】


作者のこうの史代さんのあとがきです。
こうのさんは「この世界の片隅に」でもそうでしたが、ふんわりとした画風にもかかわらず、重い現実を描く漫画家さんです。
「夕凪の街」は10年前に原爆に遭った女性が主人公です。
こう書くと結末はご想像できると思いますが、ほんとうに理不尽な結末です。
いつもふんわり微笑んでいる皆実(みなみ)。
そんな彼女は、ときどき妙につっけんどんになったり、怒ったりします。
それは、幸せになろうとしている時。
10年前の「あの日」がフラッシュバックして、幸せから目を背けてしまうのです。
そんな皆実がようやく幸せをその手に掴もうとした時。
彼女はいったんはその幸せを拒絶しますが、勇気を出して幸せに手を伸ばします。
その時、過去の亡霊たちに捕まってしまったように、私には思えました。

 

二行書評 〜もう1行付け加えるなら〜

【同い年の被爆二世がいるなんて、考えたこともなかった。。。】
「桜の国」は、「夕凪の街」の続編で、1987年と2004年の東京を舞台としています。
皆実の弟「旭」の子供の、「七波」が主人公です。
旭は疎開していたため原爆には会いませんでしたが、七波の母親は赤ちゃんの時に被爆しています。
七波は2004年に28歳とありますから、1976年生まれです。
私は1972年生まれですから、私よりも年下になるわけです。
私の母は戦後生まれでしたので、うっかり者の私は、被爆二世の方々は、私より随分年上の方だと思っていました。
祖母の友人の旦那さんが被爆者であり、そのお子さんが母と同い年だったこともあるかもしれません。
ですが、私が生まれたのは終戦わずか27年後。
被爆当時0歳だった方は27歳。
当然私より年下の被爆二世の方が大勢いらっしゃるわけです。
そのことに思い至らなかった自分自身に愕然としました。